Freyia

フレイア (2)

おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃぁ・・・・・・。

力強い産声が聞こえる。
「エヴァ!」
思わず大きな声が出る。
・・・・・・・・・ん?赤ちゃんの声がユニゾンで聞こえる。まさか?

・・・医者が、分娩室から出てくる。笑顔を見せて。
「奥方は、よく頑張られました。母子ともに健康です。閣下によく似たお嬢様とご子息ですよ」
「・・・お嬢様?ご子息?」
「双子でいらっしゃいます。奥方様にはもうお知らせしてありましたが?」
予想外だ。・・・一度に二人?

とにかく赤ちゃんと対面だ・・・。
新生児室で、赤ちゃんは真っ赤な顔で、しかし、気持ちよさそうに眠っていた。
(・・・似てる)
帝国軍の至宝は、頬を少年のように染めた。
自分の子どもというものは、こうもかわいいものなのか。
自分と同じ、しかし、自分よりもずっとふわふわの蜂蜜色の髪の女の子。
そしてエヴァと同じ、手触りのいいであろうクリーム色のふわふわの髪の、男の子。

エヴァは、長いお産に疲れているようだったが、それでも特上の笑顔を見せて夫を迎えた。
「あなた、ウォルフ・・・」
「・・・・・・ありがとう、エヴァ。かわいい子どもたちだよ」
そう言って、エヴァに優しく口づける。
「二人ともあなたそっくりね。きっと、あなたに似て誰からも好かれる子になるわ」
「気性までおれに似たら困るな。きっときみのように優しい子に育ってくれるさ。でも、双子とは聞いてないぞ?」
「あら?言ってませんでした?」
エヴァが赤くなる。
「わたしったら・・・てっきり言ったと思っていましたわ」
「おれも忙しかったからな」
国務尚書なんて大役を引き受けてしまって、休暇も満足にとれない。
それどころか、家にもなかなか帰れない。
でも父親になったことだし(今までも父親だったが、今度は正真正銘自分の子だ!)
これからはできるだけ家族サービスにつとめよう。

「名前はどうします、ウォルフ?」
エヴァが笑顔で聞く。
子どもは生まれることはわかっていたが、しかし、2ヶ月も早く生まれることは予想していなかった。
おまけに二人分の名前が必要になってしまった。
「・・・まだ考えていなかった」
ミッターマイヤーは照れたような表情を見せる。

エヴァはすっかり母親の表情になっている。
当たり前だ。
フェリックスを育て、家庭をしっかり守ってくれているのだから。
それでも、自分の血のつながった子どもというのは、また違った感慨がある。
「エヴァは?何か決めている?」
「わたしが決めてよろしいのですか?」
「もちろんだ、きみは母親だよ」
「じゃあ・・・」
エヴァは愛する夫の耳元でささやく。
男の子はヨハネス・ウォルフガング、女の子はフレイア。
男の子にはあなたと同じ名を、そして、女の子には、地球の神話の、愛の女神の名を。
「・・・悪くない。いい名前だよ、エヴァ」
ミッターマイヤーはほほえむ。
多分どんな名前をささやかれても、ミッターマイヤーは「いい名前だ」と言っただろう。
そうエヴァは思い、何かおかしくなってくる。


同じように、なかなか赤ちゃんができなかった母親として、エヴァには絶対に母親になって欲しかった。
それだけです。
ちなみに、うちの主人も8ヶ月の時に「女の子だ」ということがわかり、ちゃんとそれを伝えたのですが、
出産の時にはすっかり忘れていました(^◇^;)この場合は、国務尚書に就任したばっかりのミッターマイヤーが
忘れていたのか、なかなか家に帰れなくてエヴァが話をすることができなかったのか・・・。どっちかしら?



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